フィリピンの手術師

フィリピンの手術師こそはまさに現代の呪術師といえよう。また、若者たちの間では、かっこうのよいグループ・サウンズやゴーゴーダンスに熱狂する者も、LSDを飲みシンナーに酔いしれる者もすべて流行という呪術のかっこうのモルモットである。40年程前にはじめて白人に接して、白い毛皮をかぶった幽霊だ、と恐れ叫んだ東ニューギェアの土人たちも、さまざまの国から派遣されるさまざまな文明人からこれから先どんどん感化されることで、自分たちの祖先から伝わる呪術の世界を脱してゆくことは可能であろうが、集団で住むことに慣れた彼らが、個人、個人勝手気ままに生きることを強いられる現代文明社会に入って、強い刺激にうまく耐えてゆけるかどうかは疑問である。

しかし個人主義に徹したかに見える現代人が本能的に志向しているものは、もしかしたら、原始の世界のシャーマエズム的集団支配であるのかもしれない。機械的集団の中の個人であることにつかれはてた時、いつか人は呪術師があらわれて、一人一人の呪いに耳を傾けてぐれる事を待ち望むようになるだろう。