高脂血症の危険因子

中性脂肪コレステロールと同様に食事から取り入れられるものだけではなく、肝臓でもつくられます。その大部分は筋肉や心臓でのエネルギー源として使用されます。そして余ったものか、皮下脂肪のかたちで蓄えられます。リン脂質とは、血清脂質のうちリンを含む成分のことですが、細胞膜と血液中に多く合まれています。この成分も細胞膜をつくる際に欠かせない重要な成分です。遊離脂肪酸中性脂肪が分解した時につくられ、ほとんどがエネルギー源として使われます。

高脂血症の実際の診断には総コレステロール、HDLコレステロール中性脂肪三者がもっぱら用いられています。これまで日本では、一九八七年度日本動脈硬化学会で示された血清総コレステロール値二二〇以上、中性脂肪値一五〇以上、HDLコレステロール値四〇以下を基準値として高脂血症治療が行われてきました。

しかし、高脂血症はあくまで数ある危険因子の一つとして捉えられるべきで、同時に存在する肥満、糖尿病。高血圧などの虚血性心臓病危険囚子を考慮した指針が必要です。一九九六年、危険因子の重要性を踏まえた新しい診断基準および治療目標か日本動脈硬化学会において公表されました。

高脂血症かどうかの判断には採血の条件が重要です。よく見られるのが食後の中性脂肪値の上昇です。空腹時の中性脂肪値が正常な場合には、食後六時間以内に元の値に戻りますが中性脂肪値が高い場合には回復が遅れます。中性脂肪値が高くても総コレステロール値には大きな変動は見られませんが、HDLコレステロールはわずかに低下します。したがって、総コレステロール値の評価は食後でもかまいませんが、中性脂肪値の評価には一二時間絶食で前日禁酒が原則です。中性脂肪値増加例では、それが守られたか確認する必要があります。

中性脂肪値が三〇〇未満の場合はLDL(いわゆる悪玉)コレステロールの値を総コレステロールーHDLコレステロール中性脂肪という式で算出することができますが、あくまでも参考値にすぎません。中性脂肪値が三〇〇を超える場合には、この式が使えなくなり、LDLコレステロールを直接測定する必要があります。しかしLDLコレステロールの測定装置かまだ普及しておらず、検査センターに測定を依頼しているのが実情です。近い将来には、一般病院でも総コレステロールではなくLDLコレステロールを測定するようになることは間違いなさそうです。