高血圧症の症状と検査

血圧検診は定期検診のなかで最も広く行われています。前述のように高血圧症の頻度は年齢とともに増加します。しかし、高血圧症は通常自覚症状をともなわないので、血圧を測る以外にそれを知る方法がありません。熱があれば、体温計で測らなくてもだいたい予測できますが、高血圧症は、予測することはほとんど不可能です。

心筋梗塞などの重大な障害が起これは、激しい胸痛や呼吸困難などを突然自覚し、そのまま死亡することも稀ではありませんが、それまでは全く自覚症状がないことが少なくありません。アメリカでは高血圧症のことを「沈黙の殺人者」(サイレントーキラ)と呼んで一般の注意を喚起していますが、これは元気にしていた人が急に脳卒中や心筋梗寒を起こして死亡することが稀ではないからです。

高血圧症の検診はもちろん血圧測定にはしまりますが、一般的な診療のほかに、心電図検杏、心臓超音波検査、胸部X線撮影、尿の検査、眼底検査、採血検査などか行われます。また必要に応して、腎臓の精密検査を行うこともあります。厳密にいえば、高血圧症は死因にはなりません。心臓や血管に障害がなければ、血圧は高くてもそのために死亡することはないからです。高血圧症治療の究極の目的は、脳卒中や心臓病などの循環器病を予防することであり、これらが予防できなければ高血圧症の治療は無意味になってしまいます。

WHOの基準では、血圧が高いだけで諸検査をしてもそれ以外に異常がないものを高血圧症の1期、心臓の肥大や眼底などにある程度異常のあるものを2期、脳卒中心不全心筋梗塞、腎臓の障害などがあるものを3期として区別しています。1期のなかには、精神的な興奮やストレスなどのためにある期間だけ血圧が上がっているものが合まれています。

血圧がいろいろの因子で動揺をしめすことは前述の通りですが、このような場合は。生活環境を調幣して、経過をしばらくみることになります。1期の高血圧症はそのうちに血圧か正常のレベルまでドかってくることが少なくありません。2期は心臓血管系に障害が起こってきている時期なので、積極的に治療する必要があります。治療によって3期に移行することを、予防または遅らせることができるからです。