三方一両損のニ〇〇二年度改革案

保険方式で対立するのも無益なように思われます。保険は医療を財政的に支えるものだからです。かかった医療費は誰かが支払わなければなりません。医療費総額をどのように割り振るが、という問題にすぎないからです。むしろ、効率的にいかに良質な医療を提供できるのか、そのために果たすべき保険の役割を論じていったほうが良いのでぱないでしょうか。

厚生労働省は、二〇〇二年度から、医療制度の抜本改革に取り組む予定でした。が、高齢者の医療制度一つとっても関係団体の意見集約ができず、抜本改革は先送りとなりました。ところが、老人医療費の増大によって、各健康保険の財政が危機的状況に陥りつつあり、何らかの財政的手だてが必要でした。そこで、厚生労働省の案として二〇〇一年九月、三方一両損の「医療制度改革試案」を打ち出し、二〇〇二年度から実施しようとしています。

三方の三つとは、患者、各医療保険(勤労者と企業)、医療機関、のことを指します。それぞれが増大する医療費負担の痛みを分かち合うことを意味しています。まず、患者の負担増です。サラリーマンの医療費自己負担を二割から三割に引き上げます。高齢者医療制度(老人保健法)の対象年齢を七十歳以上から七十五歳以上に引き上げます。

さらに、七十五歳以上の自己負担を一割とし、高所得者については二割とします(三千円から五千円の自己負担の上限は廃止)。この結果、七十歳から七十四歳までは老人保健法の対象からはずれ、自己負担は一割(上限付き)から一挙に三割になってしまいます。負担増が大きすぎるので当面二割とする案になっています。さらに、高額療養費の上限引き上げなども盛り込まれています。逆に負担減となるのは、乳幼児(三歳未満)の場合の自己負担を三割から二割に引き下げること、現役世代の薬剤費別途負担の廃止だけです。

次に、健康保険の保険料についても増収策(企業や勤労者にとっては負担増)がとられる予定です。健康保険料はボーナスを含めた年収を基準とする総報酬制になります。政管健保の保険料も二〇〇三年度から保険料率を引き上げることが盛り込まれています。